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楽農楽写Z

西中国山地の風景だけを撮影する団塊男が定年後、広島県安芸太田町に休耕田付きの民家を借りて、田舎暮らしを楽しんでいます。豊かな自然を紹介しながら、地域の情報を発信します。       

幻想・トリクルダウン

 小学校へ入るころの鮮明な記憶がある。家から200メートル先の田舎道を歩いている貧しい人が見えた。母は「〇〇が来た」と言って蔵へ米を取りに行き、わずかな量を分け与えた。まず大企業や金持ちが豊かになって、その果実がしたたり落ち、全体が豊かになる、という「トリクルダウン説」を聞くと、国全体が貧しかった60年前の光景を条件反射的に思い出す。「民百姓、貧乏人はお恵みがあるまでしばし待て」と言われているような、不快な言葉である。

1449トリクルダウン 
よく使われるグラスの映像で、これを見ると本当に「滴り落ちる」と錯覚させる。実は一番上のグラスは注げば注ぐほど大きくなり、それほどこぼれないのが現実だ。しかも、シャンパンは蛇口からではなくボトルから出るのだから、下までは届くほど量はない

 子どものころ「インドは厳しい身分制度の中で大多数が貧困なのに、なぜ宮殿に住むような大金持ちがいるのか」が分からなかった。程度の差こそあれ、国民全体が豊かになっていき、その中から才覚のある人が金持ちになる、と思っていたのだ。最近になって疑問が解け始めた。格差を広げ、貧困層を増やせば、国全体の富は極少数の大企業や富裕層に集まるだけのことだ。それを可能にする税制や法律が少しずつ変られ、規制緩和が進められている。

 マネーは金の臭いを嗅ぎ付けて、金のある所へ集まる。儲からない話や貧しい人へは回っていかないのがマネーの本質だ。億単位の金には全くの無縁仏だから、お金持ちの心理は分からない。10億円だったら20億円をめざし、さらに倍増を狙って際限なく欲を膨張させるのが人間の性ではなかろうかと思う。途中で豪邸を建て高級車を買ったとしても、それは税金対策であったり、自己顕示欲であって、果実を社会へ還元しようとしたものではないだろう。

 利益の最大化が企業経営の目的だから、利益が増えたからと言ってそれを社会へお返しするような経営者はいない。トリクルダウン説は、格差と貧困の拡大を覆い隠す幻想に過ぎない。アジアの国でスラム街の横に高層マンションが建つ映像を見ることがある。台風接近で避難するフィリピンの人の生活環境の劣悪さには驚かされた。日本でも信じられない現実が進行しているのではないか。10年、20年後、深刻な風景が現れるような気がしてならない。

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